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ドッグフードとキャットフードの違いと検査

2024年2月19日

ドッグフードとキャットフードの違い

人間と同じように、犬や猫も、脂肪、たんぱく質、炭水化物、ミネラル、ビタミンを食べ物から摂取する必要があります。しかし人間と犬や猫では必要な栄養素の割合に大きな違いがあります。

犬は雑食

犬は、長い間人間と共同生活していく中で雑食性が進み、たんぱく質の必要量は人間より多いものの、最適な三大栄養素の割合は全般的に人間とよく似ています。

猫は肉食

猫は、人間と暮らし続けていても肉食性を保ち続けたため、人間や犬に比べてたんぱく質が多く必要です。また、猫はタウリンや、ビタミンAなどを体内で作ることができないため、タウリンを十分に含んだフードを与える必要があります。

出典:飼い主のためのペットフード・ガイドライン~犬・猫の健康を守るために~(環境省自然環境局)

人間

タウリン

猫はタウリンを体内で作ることができず食事からでしか摂取できません。タウリンは目の健康に影響を与える栄養素であり、多くのキャットフードに添加されています。

ビタミンA

犬はβ-カロテンからビタミンAの合成ができますが、猫はできないため、キャットフードにはビタミンAやビタミンB群のナイアシンなどが多く含まれています。

水分

水は、動物の身体の60~70%を占めるといわれています。
猫はもともと砂漠で暮らしていたため、犬に比べて水分を必要としませんが、下部尿路疾患、腎疾患などの健康面から水分補給は大切です。

基本的に、キャットフードはドッグフードに比べて、「高タンパク」「高脂肪」なものが多いとされています。
また、近年注目のジビエ(野生獣肉)は、「高タンパク」であるとして、ペットフード(特にキャットフード)におすすめの原材料であるとされています。
参考:コラム「ジビエ(野生獣肉)を使用したペットフード」 

人間の食べ物でも、犬・猫には害を及ぼす食材があります。特に玉ねぎやチョコレートなどは注意が必要です。
詳しくは、飼い主のためのペットフード・ガイドライン(環境省自然環境局)をご覧ください。

ペットフード安全法における成分規格

ペットフードの安全性確保およびペットの健康を保護する目的として、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称:ペットフード安全法)」が平成21年(2009年)6月に施行されました。
→ 詳しくはこちら、コラム「ペットフード安全法とは」

この法律では、添加物、農薬、カビ毒などの汚染物質等についての規格・基準が設定され、規格・基準に合わない製品の輸入、製造、販売は禁止となります。
「“愛がん動物の栄養に供することを目的として飼養される犬および猫“に使用されるもの」として、一般的な加工ペットフード、生肉、ミネラルウォーター、スナック・ガムなどの間食、特別療法食、サプリメントなどが対象とされています。

ペットフード安全法では、犬・猫用において一部の成分規格が異なります。

分類物質等定める量(μg/g)※1
添加物エトキシキン・BHA・BHT150(合計量)
エトキシキン
75以下
亜硝酸ナトリウム100
農薬グリホサート15
クロルピリホスメチル10
ピリミホスメチル2
マラチオン10
メタミドホス0.2
汚染物質※2アフラトキシンB10.02
デオキシニバレノール21
カドミウム1
3
砒素※315
BHC
(α-BHC、β-BHC、γ-BHCおよびδ-BHCの総和をいう)
0.01
DDT
(DDDおよびDDEを含む)
0.1
アルドリンおよびディルドリン
(総和をいう)
0.01
エンドリン0.01
ヘプタクロルおよびヘプタクロルエポキシド
(総和をいう)
0.01
その他メラミン2.5

※1 基準値は水分量を10%として設定されたもの

※2 汚染物質:環境中に存する物質であって、意図せず愛がん動物用飼料に含まれるものをいう

※3 令和3年10月1日から砒素の含有許容量(15μg/g以下)の規定が、無機砒素の含有許容量(2μg/g以下)の規定に改められます。

AAFCO基準(総合栄養食)における栄養素

AAFCO(The Association of American Feed Control Officials:米国飼料検査官協会、以下AAFCO)は、ペットフードを含めた飼料の栄養基準やラベル表示に関する基準を設定している米国の団体です。

1993年にドッグフード・キャットフードの推奨栄養成分を公表しました。必要な栄養素(タンパク質、脂肪などの最低値、ビタミン、アミノ酸、ミネラルなど)の下限値や危険性のある原材料の上限値を設定しています。

※乾燥物質基準(DMB:水分を含まない状態)に基づく。

ここでも既定されている成分や値に差異があります。

栄養素単位
子犬成犬子猫成猫
タンパク質%22.5以上18.0以上30.0以上26.0以上
アルギニン%1.00以上0.51以上1.24以上1.04以上
ヒスチジン%0.44以上0.19以上0.33以上0.31以上
イソロイシン%0.71以上0.38以上0.56以上0.52以上
ロイシン%1.29以上0.68以上1.28以上1.24以上
リジン%0.90以上0.63以上1.20以上0.83以上
メチオニン%0.35以上0.33以上0.62〜1.500.20〜1.50
メチオニン+シスチン%0.70以上0.65以上1.10以上0.40以上
フェニルアラニン%0.83以上0.45以上0.52以上0.42以上
フェニルアラニン+チロシン%1.30以上0.74以上1.92以上1.53以上
トレオニン%1.04以上0.48以上0.73以上0.73以上
トリプトファン%0.20以上0.16以上0.25〜1.700.16〜1.70
バリン%0.68以上0.49以上0.64以上0.62以上
脂肪%8.5以上5.5以上9.0以上9.0以上
リノール酸%1.3以上1.1以上0.6以上0.6以上
αリノレン酸%0.08以上0.02以上
アラキドン酸%0.02以上0.02以上
EPA+DHA%0.05以上0.012以上
リノール酸+アラキドン酸︰αリノレン酸+EPA+DHA 30:130:1
カルシウム%1.2〜1.80.5〜1.81.0以上0.6以上
リン%1.0〜1.60.4〜1.60.8以上0.5以上
カルシウム︰リン 1:1〜2:11:1〜2:1
カリウム%0.6以上0.6以上0.6以上0.6以上
ナトリウム%0.3以上0.08以上0.2以上0.2以上
塩素%0.45以上0.12以上0.3以上0.3以上
マグネシウム%0.06以上0.06以上0.08以上0.04以上
mg/kg88以上40以上80以上80以上
mg/kg12.4以上7.3以上15.0以上5.0以上
銅(ウェット)mg/kg8.4以上
マンガンmg/kg7.2以上5.0以上7.6以上7.6以上
亜鉛mg/kg100以上80以上75以上75以上
ヨウ素mg/kg1.0〜111.0〜111.8〜9.00.6〜9.0
セレンmg/kg0.35〜20.35〜20.3以上0.3以上
ビタミンAIU/kg5000〜2500005000〜2500006668〜3333003332〜333300
ビタミンDIU/kg500〜3000500〜3000280〜30080280〜30080
ビタミンEIU/kg50以上50以上40以上40以上
ビタミンKmg/kg0.1以上
ビタミンB1(チアミン)mg/kg2.25以上2.25以上5.6以上5.6以上
ビタミンB2(リボフラビン)mg/kg5.2以上5.2以上4.0以上4.0以上
パントテン酸mg/kg12.0以上12.0以上5.75以上5.75以上
ナイアシンmg/kg13.6以上13.6以上60以上60以上
ビタミンB6mg/kg1.5以上1.5以上4.0以上4.0以上
葉酸mg/kg0.216以上0.216以上0.8以上0.8以上
ビオチンmg/kg0.07以上0.07以上
ビタミンB12mg/kg0.028以上0.028以上0.02以上0.02以上
コリンmg/kg1360以上1360以上2400以上2400以上
タウリン(ドライ)%0.1以上0.1以上
タウリン(ウェット)%0.2以上0.2以上

このように、ドッグフード・キャットフードそれぞれに規定された成分規格に沿った検査が必要です。
Mérieux NutriSciences Japanでは、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC:Food and Agricultural Materials Inspection Center)の「愛玩動物用飼料等の検査法」にしたがって、ペットフードの成分規格検査(必須20項目)を受託しています。
またAAFCOが設定している総合栄養食としての栄養基準に対応した検査を実施しています。パッケージ以外でも、栄養素の追加やカスタマイズも承っていますので、ご相談ください。

ペットフード安全法などペットフード検査に関する詳しいFAQ集はこちらをご覧ください。

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